リノベーションとは、生活環境のサードプレイス化である。(?)
ツイート■ 近代建築が目指したライフスタイル
近代建築的(モダニズム的)集合住宅が本格的に建ち始めたのは関東大震災の復興を目的につくられた”同潤会アパート”でした。これは、アジアの盟主たる日本にふさわしい耐震・不燃化した都市型集合住宅を建設し、生活を西洋化させ、欧米に遅れをとった日本の近代化を成し遂げることが目的でした。
しかし、現実は、外観はRCの近代建築でしたが、室内は畳敷き・フスマ・障子・押入れ・欄間・地袋などの和風な内装でした。戦後、DKが発明され、家事空間の改善と食寝分離を基本理念に、日本型の近代都市型居住空間が発展していきます。賃貸集合住宅では近代的外観に畳敷きの内装という時期が長く続いていましたので、畳の上に絨毯をひいたり、ロール状のフローリングを敷いたりして、生活の西洋化を入居者が独自に行なっていました。引越しの時、テーブルの足の跡が畳にクッキリと4ヶ所残っているのが印象的で、いまだに覚えています。
本格的に賃貸集合住宅が畳からフローリングに切り替わるのは、80年代以降からでしょうか(?)経済発展をした日本に自信を持った若者を中心に、前近代的な畳敷和風デザインの部屋が嫌われ、押入れ・フスマ/障子もなくなり、ビニールクロス・ポリ合板のドア・クッションフロアー+ユニットバスというシンプルな(実は安価で安普請な)内装に変わっていきます。学生時代一番人気は、なんといっても”新築+フローリング”という状況だったのを思い出します。現在は基本的にこの流れの延長上にいるのですが、今世紀初頭、別の流れが出てきました。それが”リノベーション現象”です。
■ リノベーション現象とは、ポップカルチャー化現象である。
「自分の着たい服を着るように、”自分の住みたいデザインに住む” 時代」
リノベーション現象とは、借りものの=洋風化・欧米化を目指した近代化=モダニズムを卒業し、現在の日本人にとって本当に住みたい住環境デザインを取り戻すための大衆化運動のような気がします。
現在の日本は世界の中で最もポップカルチャーが進化し、他国の追随を許さずガラパゴス化しています。この、ポップカルチャーにあらゆる分野がのみ込まれている中、同潤会アパートから1世紀弱過ぎて、やっと、遅まきながら賃貸集合住宅も”リノベーション”というポップカルチャー化現象にのみ込まれ始めたのです。
都市の住居(=箱モノ)不足は床面積だけを見れば供給過剰になり目的は達成、その上、人口減少、少子化、低成長時代という状況で、貸し手優位から借り手優位に転換するという状況です。一方、衣服→アクセサリー→小物・雑貨→イス→家具→と拡大してきた感性領域がインテリアまで到達、インテリも個人を基準とした感性領域となりました。こういった状況もあり、”リノベーション”は瞬く間に広がっていきました。表面だけを新しくする、見た目だけが問題な今までの”りフォーム”とは根本的に違います。
広がっていくリノベーション空間を見ると、モダニズムが課題としてきた諸問題がまるで無かったかのような自由なデザインが蔓延しています。自分が着たい服を着るように、自分の住みたいデザインの部屋をつくる時代がきたのです。(インテリアのファッション化)
■ リノベーションとは、生活環境のサードプレイス化である(?)
グローバル化の中で本物の資本主義がきているようで、日本全体が経済低成長の中で苦しんでいるように見えます。(私はバブル時代を知っているのでそう見えるだけのような気もしますが・・・)いまだモダニズム理論で形作られている社会と、激しい変化をしている現状=フラット化してゆくポップカルチャー社会に、激しいギャップが生じ、仕事環境、家庭環境ともに不安定化しています。安定した自分を長期的に維持するために、生活環境の”サードプレイス化”が進んでいるのではないでしょうか?
住空間のリノベーション、仕事空間のリノベーションのデザインをよく見てみると、モダニズムデザインが依然主流としてありますが、他方、おもしろいのはポップカルチャーデザイン(サブカルも含め)のインテリアではないでしょうか?これは、モダンデザインを根底に、和風とか、洋風とか、アジア風などの”風”的デザインテイストを取りつつも、独自の感性でデザインしていることがよくわかります。それは、借り物の感性ではなく、自分の中から湧き出てくる感性でできています。ちょっと変に見えるところも味となり独特な空間となっています。
これらの現象を見ると、生活環境自体をポップカルチャー(サブカルチャー)でまとい、空間自体に戯れられうような空間、つまり、”戯れ空間”をつくるのが目的のように見えます。住居も職場も(その他の空間も)自分の居心地の良い空間=”戯れ空間”で埋めてしまいたいのが、現在の若者たちの希望ではないでしょうか?
近代=モダニズムは、機能を分類し、それぞれの役割を与える論理でした。住空間、仕事場、遊び場、商空間、リラックス空間など、機能と空間がはっきり定義・分類され、都市の中に配置されてきました。しかし、これも進化したポップカルチャーが浸蝕、各機能・空間は融合してきています。自宅で仕事したり、オフィスをリビング的にしたり、居住空間、仕事空間、商業空間いずれにかかわらずカフェスタイルをとりいれたり・・・よく見かけるようになりました。
社会の不安定化の中の必要性としてのサードプレイス。自分の戯れ空間としてのサードプレイス。そして、発展系として、新社会保障・コミュニティなどとしてのサードプレイス等、有り余る「建物=箱モノ+リノベーション」により、社会はサードプレイス化していくのではないでしょうか?
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