「続・山王R」06:大工工事2

11月 16th, 2012

■ 山王マンション305号室、引き続き大工工事が進んでいます。

● 山王マンションでは、(当時のマンションではよくみられましたが)、バルコニーがありません。
そうなると、
1,洗濯物をバルコニーで干せない
2,エアコン室外機をバルコニーに置けない
といった問題がおこります。
このような状況なので、各部屋、エアコンを室内のどこにつけて、室外機をどこに置くのか、物干しスペースをどこに確保するのか、が大問題となります。

今回の305号室では、既に玄関ドア上部にエアコンスリーブの穴があけられていますので、そこを利用し、廊下に室外機を設置することにしました。エアコン室内機はこの部分に取り付けます。


↑ 下から見たところ。右側の壁にエアコンを取り付けます。中央壁から電線が出ています。

● フローリングは無垢材を利用しています。
2004年に山王マンションで最初のリノベーションをした時、賃貸物件で無垢のフローリングを使用し、次の更新時に問題がおきないかいろいろ議論しましたが、入居者が変わられた時の更新問題も特におこりませんでした。当初のイメージ通り、無垢材は味が出てきて良い感じになってきています。


↑ 無垢フローリング。

● 曲面の壁ができていました。


↑ 上:既存の天井がそのまま残っています。
下:既存の天井を撤去。魅力的な小幅板型枠の荒々しくも繊細なコンクリート打ち放しのスラブが現れました。
2つの領域の間(はざま)に、この曲面の壁があります。

● よく考えてみると、全てのものは時代の支配下に置かれていることがわかります。賃貸マンションにバルコニーがないのも、洗濯機置場がないのも、外壁のタイルが今ではないのも、サッシがスチールであるのも、コンクリートスラブの型枠が小幅板なのも、天井材がチープなのも、地袋があるのも・・・今では、作ることのできないものばかりです。建築材料や洗面器などの衛生陶器、デザインなども、その時代だから使用できたり、つくることができたものなのです。
昔の建物が古く感じる一つの理由は、この部屋のように、現在見慣れない材料、素材、製品、工法、デザインなどが使われていると違和感を感じ、時代が異なることがわかるからです。”いま”とは違う時代が305号室にはありました。44年という歴史が”いま”とは異なる時代表現を可能にしているわけです。

44年という時間の重みを表現することが、今回のデザインテーマとなっています。

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10-照明工事/カーテン工事
09-カーテンレール取付工事/エアコン工事
08-塗装工事
07-電線管
06-大工工事2
05-大工工事
04- 新設配管工事
03- 解体工事2
02- 現場見学
01- 解体工事1

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「続・山王R~NEW STANDARD RENOVATION~」:山王マンションリノベーションⅢ
場所:福岡県福岡市
山王マンション:築45年、RC6階建
元間取:3DK-48平米
所有:吉原住宅㈱
運営:㈱スペースR デザイン
施工:シーズ・クリエイションズ㈱(Shii’s Creations)
設計:信濃設計研究所/nano Architects

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「続・山王R」05:大工工事

11月 9th, 2012

■ 山王マンション305号室の配管工事が終わり、大工工事が進んでいます。

今回の大工さんの工事は、「曲面」 部分があるので大変です。
はたして施工できるのかどうか、現場監督の井田さんと話し合いが続きましたが、大工さんの腕がよく計画どおりに施工できています。


↑ 既存の天井を曲面にくり抜き、新しい曲面の壁を作っています。
問題点は、
1,天井を曲面にくり抜くことができるのか?
2,くり抜くことができたとして、新しい曲面の壁を取り付けできるのか?
いずれも、施工できています。


↑ 床の曲面
天井に続き、床も曲面加工しています。この上にフローリングが張られますが、フローリングも曲面加工します。

リノベーションでの施工精度の考え方は、新築時の施工精度とは異なる考え方がよいのではないかと思っています。
それは、施工精度の程度を、デザインとして表現するということです。
新築時では考えられませんが、リノベーションの場合、時には、わざわざ粗い仕事にしてもらう場合もあります。部分部分で見るとまずいように感じますが、全体の雰囲気を考えると、そこだけ精度を上げても調和しないような場面もあるからです。
リノベーションでは、施工精度を調整することは、手抜きではなく、表現を選択することです。

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運営:㈱スペースR デザイン
施工:シーズ・クリエイションズ㈱(Shii’s Creations)
設計:信濃設計研究所/nano Architects

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「続・山王R」04:新設配管工事

11月 5th, 2012

■ 山王マンション305号室の解体工事が終わり、新設配管工事が進んでいます。

賃貸マンションリノベーションにおいて設備配管工事は難しい工事です。

● 生活を支えるライフラインである配管は大きく分けると次の2つの部分に分けることができます。
A,室内の配管 → 部屋の中の配管
B,共用配管 → 「枝葉」である個々の部屋の配管が接続する「幹」となる配管
これらを評価する場合、A,Bそれぞれの個別の評価と、2つ合わせた複合的評価が必要です。

● 配管の種類としては
給水管、排水管、ガス管、電気、情報
などがあります。

● ポイントは
1,既存の配管状態の把握 → 既存配管を利用するのか?取り替えるのか?を判断
2,既存配管方式の把握
→ スラブ下抜き配管なのか?スラブ床上配管なのか?により、建物内の配管をどう変更するのか評価、検討
3,共用配管の状態の把握
→ 長期建物維持計画を策定した上で、配管ルート・配管自体を変更するのか?しないのか?などを検討

などです。

「山王マンション」においては、長期建物維持計画に基づき、大規模改修工事を済ませ、共用配管を室外に新設し、リノベーションした部屋は、スラブ床下配管から、スラブ床上配管へ変更した上で、新設共用排水竪管へ接続するようになっています。

それでは、具体的に配管工事をご紹介いたします。

■ 新設配管工事

↑ 既存配管がスラブ下抜き配管方式のため既存配管は封鎖、新設配管はスラブ床上配管に変更。
錆びた給水管も封鎖し、新たに給水管+給湯管を設置


↑ 新設排水管は、スラブ床上で外部廊下へ出します。
昔の建物では給水管はよく躯体(コンクリート)内に埋め込まれているのと、鋼管のため錆びてしまい管自体の寿命がきており、更新ができないので、新しい給水管+給湯管を設置します。

■ 外部廊下へ出てきた排水管と給水管+給湯管

↑ 外部廊下へ出てきた排水管は廊下のスラブを貫通させ下に抜きます。


↑ スラブ下に出てきた排水管を横に振り、大規模改修工事時に新設してある外部排水竪管に接続します。


↑ 大規模改修工事時に新設された共用排水竪管。リノベーションした部屋の新設排水管をこの竪管につなぎます。

以上、築40年を超える賃貸マンションにおける排水管の更新例でした。
A,室内の配管 と B,共用配管 の更新計画、更新工事を一体的に行うことが、建物を長期にわたり維持していくのには必要です。

 
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場所:福岡県福岡市
山王マンション:築45年、RC6階建
元間取:3DK-48平米
所有:吉原住宅㈱
運営:㈱スペースR デザイン
施工:シーズ・クリエイションズ㈱(Shii’s Creations)
設計:信濃設計研究所/nano Architects

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「続・山王R」03:解体工事2

11月 1st, 2012

■ 山王マンション305号室の解体工事が進んでいます。

リノベーションにおいて解体工事は難しい工事です。

1,どこまで壊し、どこまで残すのかを細かく決め、指示、実行していただけなければならない。
2,コンクリート部分をハツル(壊す)ときには、天地を揺るがすような音が発生するので、住民の方々から必ずクレームが出る。
3,壊してみなければ、何が出てくるのかわからない。見えない部分が想定どおりになっているのかわからない。

などの問題が常につきまといます。

「山王マンション」においては、既に何室もリノベーションしていますので、見えない部分の構造もどうなっているのかわかっているし、住民の方々も慣れていらっしゃいますので、大きな問題はあまりおきません。

それでは、築40年を超える賃貸マンションの床下がどうなっているのか、こういった機会がないと見ることができませんので、ご紹介いたします。

■ 解体前の現況

↑:既存の状態です。築40年を超える賃貸マンションの多くは外観が近代建築であっても、室内はこのような和風です。山王マンションでは、横長連続窓に障子が付いています。床面には地袋収納があり、ここに座って外を眺めるようなつくりになっています。ということで、窓の高さは低めで、現建築基準法の床高さからH1100までに手すりという基準を満たしていないことが多いです。

■ 畳を取り外したところ

↑:畳をはぐと、ボードが敷いてあります。これは、パーティクルボードといいます。
畳の上を歩いてボコボコしたところの下のパーティクルボードは、このように割れていました。

■ パーティクルボードを取り外したところ

ほとんどの鉄筋コンクリート造(RC造)のマンションでは。コンクリートスラブ(床)の上に「大引(オオビキ)」と言われる木を敷き、その上に大引より小さい断面の「根太(ネダ)」を細かい間隔で敷きその上にパーティクルボード、そして、畳を敷く、という構成になっています。(この写真を見るとよく分かると思います)
 
 
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設計:信濃設計研究所/nano Architects

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「続・山王R」02:現場見学

10月 21st, 2012

学生のみなさんと現場を見学しました。

リノベーションとは表面的な(=デザイン)おもしろさが話題になりますが、建物をあと何年保持していくのか?、保持できるのか?、どこに手を入れ、どこを残すのか?本当に借り手がつくのか?経営的に成り立つのか?という大問題を考えていくことが重要で、そういったことを解決することがリノベーションの大前提です。
40年以上を生き抜いてきた建物には、人生と同じように、それだけの歴史があります。リノベーションのデザインでは、それらを思いやりながら、どのように時間を超えて蘇らせることができるのかが、おもしろさの一つです。

 
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「続・山王R」01:解体工事1

10月 18th, 2012

■ 「続・山王R~NEW STANDARD RENOVATION~」 解体工事が始まりました。


↑ このマーク見たことあるでしょうか?時代を感じますね。ちょっとしたマークも時代表現であることがわかります。


↑ はたしてこの天井は残るのでしょうか?窓の障子は残るのでしょうか?


↑ 地袋です。この地袋はどうなるでしょうか?先ほどのマークは、地袋の上に置いてある洗面器に付いていたものです。
この洗面器の運命は。


↑ 収納のフスマ扉です。これはどうしましょう?


↑ 取り外されたキッチン、バランス釜、ポリ浴槽・・・これらは廃棄されます。

はたしてどのような部屋に生まれ変わるのでしょうか?
 
 
 
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[ CQ ] → seek you ? : 山王マンション603リノベーション-01

7月 9th, 2012

■ 作品アーカイブ 2004年夏

この部屋を選ぶ人が求めているもの、それは・・・”物語”

リノベーションには ”物語” がよく似合う。
 
 
山王マンション603-1
 
 
■ プロローグ

1965年、福岡市博多区山王に、時代を象徴する最新型マンションが建設された。

・・・39年後の2004年。古びたマンションの1室に一人の女性が潜んでいる。
コードネームは『ドラゴンフライ』・・・次の仕事の依頼を待っている。

ドラゴンフライが部屋へ戻ってきた。重い鉄の扉を開け玄関に入り込む。
床にはガラスモザイクタイル。この床にはコンピュータセンサーが組み込まれ人物を識別。
ドラゴンフライを認識、アコーディオンカーテンが自動的に開き始める。
部屋に入り込んだドラゴンフライが指を鳴らす。するとSUS403のキッチンが壁から自動的に飛び出してきた。
コーヒーがカップに注がれる。その間アルミ製の扉を開け洗面・シャワー室に入る。モザイクタイルのスリット状の照明が
発光、シャワーヘッドから調節されたお湯が吹き出す・・・

コーヒーカップを持ちながらリビングルームのパーソナルコンピュータの前へ。パントンチェアに座り情報をチェック。
BGMはメロウ。
再び指を鳴らすと、ベッドルームのアコーディオンカーテンが自動的に開き始める。ベッドに飛び込むドラゴンフライ・・・それと同時に壁掛けモニターに次の仕事の依頼が入る。
二つ返事で引き受けると壁からゲンナマが次々と噴き出してきた・・・

■ 本編は住人が制作 Seek You !

 
 
2012年、久しぶりにこの部屋に入ることができました。
もともと古い部屋は、8年過ぎても古さは感じません。これが古い建物がもつ価値の一つです。
 
ここで暮らしてきた住人たちは、どのような”物語”を紡ぎだしてきたのでしょうか?
次の住人が決まり、また、新たな”物語”が始まっています。
 
 

WORKS : 山王マンション603/402リノベーション
→ http://www.nano-architects.com/works/12.html

STORY:山王マンション リノベーション Ⅰ期 : 2004年 福岡のリノベーション黎明期
→ http://www.nano-architects.com/blog/renovation-2/sannou01

 

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近代以降の日本の大衆居住空間は、何を目指してきたのか?

7月 6th, 2012

■ もうこれ以上耐えられない、画一的・均質的な近代日本の居住空間は、何を目指してつくられてきたのか?(ラフスケッチ)

今世紀初めに始まった”リノベーション現象”は、戦後約60年が過ぎ、やっとやってきた日本の居住空間の”ポップカルチャー化現象”ではないかと思っています。時代遅れの超保守的な業界が作り上げた、画一的、均質的な居住空間に、”もうこれ以上耐えられない”といった拒絶反応が、”リノベーション現象”の一つの原因となっているのではないでしょか。
そこで、まず、もうこれ以上耐えられない画一的・均質的な居住空間は、何を目指してつくられてきたのかを考えてみました。

○ 近代以前の住空間の何を克服しようとしてきたのか?

封建的家族形態の克服 ライフスタイル 和式 洋式   男女平等
水回りの克服 工法 湿式 乾式   不浄的空間から快適空間
自然素材の経年劣化克服 材料 自然素材 ラッピング・コーティング・化学処理  キッチュ
火災の克服 防火 可燃性 不燃化  都市災害の低減
職人不足の克服 施工性 組立   職人確保、工法マニュアル化

 

そのほか、次のような変化がありました。

畳 → フローリング
座卓+座布団 → テーブル+イス
布団 → ベッド
タイル → ユニットバス
換気扇 → シロッコファン
新壁 → 大壁
漆喰・土壁 → ビニールクロス
本物 → プリント

 

○ ライフスタイル
近代日本の大衆居住空間は、60年~70年かけて、モダニズムが提示した自由・平等・合理化などの考え方もとにしたライフスタイルの西洋化という頂点をめざしつつも、変わることのない日本的部分を残しながら、日本独自の居住空間をつくりあげたようです。
封建的な家族形態から友達のような親子関係の家族へ、座卓に内在する上下関係をなくし、テーブル+イスのアクティブ空間へ、水回りの快適空間化と家事の低減など、都市の住宅不足解消、核家族化、持ち家政策など社会政策や社会の変化のなかでライフスタイルが確立してきました。

○ 水回り
近代日本の居住空間が克服すべき(不浄的)空間が、水回り、”キッチン”、”トイレ”、”お風呂” でした。
多湿環境の中で、維持管理に大変苦労してきた水回りを、何とか快適な空間にしたいという希望が、”湿式工法”から”乾式工法”へ、ひたすら製品、工法の開発を促進していきました。多湿環境の中での水回り空間の快適空間化が国民全体の悲願であり、建築の近代化の大きな目的・目標でした。

○ 建築材料
木、紙、土という多湿に対応した、主に地産素材でできていた建築に、近代の三大素材、”鉄”、”ガラス”、”コンクリート”が参入、新たな居住空間を形成し始めます。急激な都市化とともに、火災延焼防止のために建築の不燃化が最優先政策として推し進められました。
また、経年変化・劣化してゆく自然素材に対し、変形・劣化が少なく、維持管理が簡単、施工性がよく、大量生産できる工業製品が、化学力の発展で実現し、良い材料として認識され、仕上げ材の主役になりました。対して、自然素材が悪い材料という認識になってしまいました。たぶん、近代の合理的な視点に立てば、このような工業製品が良い材料となるのでしょうね。

 

○ 近代日本の大衆居住空間はどのような材料で構成されてきたのか?

地産地消を基本に使用してきた日本建築の素材である、木や藁、紙、土などは、都市化が急激に進む中で、メンテナンスフリー、不燃化、施工性、にすぐれた工業製品に取って代わっていきます。一見、本物のような素材や、ひと目で工業製品とわかる素材など、様々な仕上げ素材がでてきましたが、全体の方向性を見ると、共通の機能・目的である、施工性がよく、安価、メンテが簡単、劣化しない、変形しないという素材で囲われた均質的な空間仕様が完成し、結果、大衆居住空間は、(特に投資目的の賃貸物件は)全国どこへ行っても同じような空間になってしまいました。普通のアパート・マンションも、億ションも基本的な内装仕上げの項目を比較すれば、同じ仕上げが使われています。

 

バブル後、目標であった西洋合理的ライフスタイルがまやかしであることが、新しい世代により無言の提示、この世代が”リノベーション現象”を起こし、新しいとか古いとか関係なく、自分の感性に合うものに価値を与えることにより、近代以降の日本の本当のライフスタイルは何か?を模索し始めたのだと思っています。
これは居住空間ばかりではなく、エネルギー政策、雇用形態、ワークライフバランス、社会補償制度もふくめた、ガラパゴス化した日本のポップカルチャー(大衆文化)主体のポストモダン的ライフスタイル全体の模索=挑戦であるといってよいのではないでしょうか?

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