■ 近代日本の居住空間は、何を目指してきたのか?― 02 (三大水回り編)

10月 11th, 2013

 

■ 画一的・均質的な標準仕様を生み出した近代日本の居住空間は、何を目指してつくられてきたのでしょうか?― 02 (三大水回り編)

今世紀初めに始まった”リノベーション現象”は、戦後60年が過ぎ、やっとやってきた日本の居住空間の”ポップカルチャー化(大衆化)現象”であり、不動産の”大衆解放運動”ではないかと思っています。戦後60年あまり、決して崩れることのなかった超保守的な不動産業界が作り上げた、全国一律の画一的、均質的な居住空間への拒絶反応が、自由に改装ができる中古物件と結びつき”リノベーション現象”として爆発、大衆に広がり始めているのです。

前回は、全国どこででも見られる画一的・均質的な標準仕様で作られた日本の居住空間は、何を克服しようとし、何を目指してつくられてきたのか、全体を概観してみました。今回は水回りにしぼってみてみましょう。

■概要 : 忌→快、湿式→乾式:三大水回り忌避空間の克服
水回りの居住空間化。湿式→乾式工法へ。忌避的空間を技術力により克服し、快適な居住空間化を達成。家の”主人=(家長)”が夫から妻へ。

日本の居住空間の近代化は、忌避空間であった水回り”キッチン”、”トイレ”、”お風呂”を技術力で克服し、快適な居住空間化することであったといっても過言ではありません。
多湿環境の中で、維持管理に大変苦労してきた水回りを、何とか快適な空間にしたいという国民全体の希望が、”湿式工法”から”乾式工法”へ、ひたすら製品、工法の開発を促進してきました。多湿環境の中での水回り空間の快適な空間化が国民全体の悲願であり、建築の近代化の大きな目的・目標でした。そして、それは、80年代中頃から90年代初め頃、ようやく成し遂げられたのです。

■忌避空間であった三大水回り空間の、快適な居住空間化

リノベーションに携わるようになり、昔の建物に出会うことが多くなりました。築30年以上昔の建物を見たとき、現在の暮らしと最もギャップを感じるところは、三つの水回り空間=便所、台所、風呂ではないでしょうか。これらの水回りをみると、もう昔の生活にはもどれないことがはっきりわかります。現在の住宅設備のなんと快適なことでしょう。昭和時代をさかのぼり、いつ頃このような快適な水回り空間が一般化したのかを調べてみました。簡単にこれらの歴史を振り返ってみましょう。

○近代以前
日本では長い間、自給自足、地産地消、リサイクルが基本の生活が営まれていました。日常生活は、身近な環境にあるものを利用するしかなかったのです。当然ながら建築も、木・紙・藁・竹・土などの身近な環境に存在する自然素材で作られていました。
高温多湿な日本において、このような、腐りやすく、燃えやすい、木・紙・藁・竹・土などでできている建物を、”雨や湿気”、そして、”火”からどのように守るのかが永遠の課題でした。これら、建物を土台から傷める”水”、そして多くの人命を奪う火事を引き起こす”火”を扱う部分は、誰しもが特別な注意を必要とする場所として認識させなければならない空間、つまり、忌避空間とされました。

基本的に、建物を傷める”水”そして”火”を扱う風呂、台所、便所の三つの水回り部分は、母屋とは切り離され別棟としたり、北側の土間としたり、裏方の隅に配置する暮らし方が普通でした。つまり、三つの水回りは居住空間ではなかったのです。このような状態だったのですから、家庭を支える主婦=女性の仕事がいかに重労働だったのかが想像できますね。

○近代以後
近代に入り、鉄、ガラス、コンクリート、という近代建築三大素材が現れました。これにより、不燃化、耐震化、高層化を実現し、高密度都市住宅を可能にしましたが、防水・結露防止等湿気対策とあわせ三大水回りが簡単に快適空間となったわけではありません。そこには建築に関わる多くの人々の絶え間なき努力による技術・工法・製品開発がありました。日本では、近代建築であっても、建物全体に関わる”雨”と”湿気”、そして、生活に関わる”水”にどのように対応してゆくのかが(今でも)課題でありつづけています。その永きにわたる格闘の末の三大水回り空間の快適化だったのです。
(“雨”と”湿気”に関してはまだまだ格闘が続いていきます。)

それは女性のためだったといってもよいでしょう。重労働にしいられていた女性たちにとって、快適化された水回り空間で、家族に囲まれ、楽しく、効率的に家事をこなす、スタイリッシュな生活が”夢のライフスタイル”でした。誰しもが望んだこの”夢”の実現のため、近代建築は、(家電などと同様に)新素材を活用した新製品・新工法の開発に邁進していきました。その結果、快適な居住空間化することに成功し、”夢のライフスタイル”を実現したのです。それでは、個別に過程を見ていきましょう。

○三つの水回り空間の変遷 Ⅰ.トイレ、Ⅱ.キッチン、Ⅲ.お風呂

Ⅰ.トイレ
1956年(S31)日本住宅公団が洋式便器を採用します。1964年(S39)東京オリンピックを期に徐々に広がり、洋式便器が和式便器を上回るのは、1977年(S52)のことになります。1980年(S55)には温水洗浄便座が発売、1993年(H05)タンクレストイレが発売されました。

簡単に振り返ると、70年代に洋式化、80年代に快適化、90年代にインテリア化(=デザイン化)が成し遂げられたといえそうです。トイレが快適な居住空間化されたのは、狭苦しい半畳広さのトイレがなくなり、温水洗浄便座が普及、デザインにまで意識されるようになった80年代頃からでしょう。

Ⅱ.キッチン
近代建築としてのキッチン設備も、大変な苦労の上に様々な問題を克服していっています。洋式便器と同様、1956年(S31)日本住宅公団がステンレスキッチンを採用。2年後の1958年(S33)公団住宅用換気扇が採用されます。それまでは、キッチンコンロ部分に換気扇がなく、窓を開けて排気していました。1973年(S48)システムキッチンが発売、次の年にレンジフードファンができます。しかし、シロッコファンの深型レンジフードが完成するのは10年後の1983年(S58)まで待たなければなりませんでした。ここでやっと、キッチンコンロの排気ダクト化が実現し、アイランド型など、キッチンの位置を比較的自由にレイアウトできるようになったのです。

簡単に振り返ると、50年代後半から、人大研ぎ出しシンクから夢のようなステンレスキッチンへ、換気扇の採用、70年代にシステムキッチン化、80年代にシロッコファンの深型レンジフード化、といえそうです。キッチンが快適な居住空間化されたのは、システムキッチン+シロッコファンのセットが揃った80年代頃からでしょう。

Ⅲ.お風呂
お風呂は防水問題が常につきまといます。近代建築として、都市型集合住宅が成立するには、どうしても防水問題を克服しなければなりません。信頼性の高い防水と現場組立ができる乾式工法が両立した工業製品であるユニットバスがどうしても必要でした。
1964年(S39)東京オリンピックの開催に合わせ、ホテルニューオータニに世界初のユニットバスが納入されました。しかし、まだ一般の住宅では、木の浴槽からFRPやステンレスの浴槽に変わった程度でした。1966年(S41)に集合住宅用ユニットバスが発売され、約10年後の1977年(S52) 戸建用ユニットバスが発売されます。70年代後半の賃貸マンションを見てみると、多くのマンションが、まだタイル+ポリ浴槽+バランス釜という組み合わせです。一般的な居住空間がユニットバス化していくのは、80年代中頃から90年代初め頃でしょうか。

簡単に振り返ると、60年代ユニットバス化の始まり、木の浴槽から新素材の浴槽へ、80~90年代にやっとユニットバスが一般化し、快適な居住空間化されたといえそうです。今では、木造住宅の2階であってもユニットバスであれば特に問題はなく設置できる時代になりました。

■ トイレ、キッチンと近代化が成し遂げられ、最後にお風呂が乾式化=ユニット化された時点で、三大水回り忌避空間は”快適な居住空間”へと変貌し、近代建築の目標の一つが達成されました。
基本的な機能を確立した三大水回り空間は、その後、生活をささえる裏方機能から、徐々に住空間の主役となっていきます。”主婦=女性=消費者”は家族の中心そして”家”の主役になっていったのです。そして、”主婦=女性”にとって、家事からの解放、つまり”家”からの解放が、(女性たちが望んだ)近代社会の目標、悲願でもありました。

水回り空間の居住空間化が成し遂げられた後、水回り空間のデザイン化(プロダクト化・インテリア化)が始まりました。今や、水回り住宅設備機器は記号化されるようにもなっています。例えば、見ただけでは用途が不明な空間に、オブジェのようなタンクレストイレが置かれた瞬間、この空間は”トイレ”である事が認識されます。このように、この空間が何か?を表す記号的役割を示すようになりました。それほどまでに、デザイン性が向上しています。

近代建築は、忌避されていた三つの水回り空間を技術力で制圧、快適な居住空間化するという悲願を達成しました。それは、裏方で重労働に強いられてきた女性の”家”の中の主役化、家事からの解放と社会進出、女性の社会的地位向上につながったのです。

現在、人口構成の変化により、子育てと介護が社会問題化しています。水回りは技術力で制圧できましたが、子育てと介護問題の解決は、技術力の問題もありますが、人が作る社会システムの問題のほうがより大きいですね。住空間では新たな課題が出てきています。

 

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→ ■ 近代日本の居住空間は、何を目指してきたのか?- 01 (概観)

その他のコラムもご覧ください。
→ nano Architects : コラム

■ 直方-F邸新築工事02-敷地:解体工事

10月 1st, 2013

■ 直方市内の住宅の新築工事-02:敷地:解体工事

遠賀川河川敷近く、間口6.4mx17mほどの細長敷地。
写真中央、木造2階建ての住宅が建ってましたが、解体工事を行い更地になりました。
この敷地に、新しい住宅を建築します。

現在設計進行中。

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■ 福岡県直方市  :  F邸新築工事

工事工程10 (完成)
工事工程09 (足場解体)

工事工程08 (足場解体前)

工事工程07 (内装工事)

工事工程06 (外壁工事)

工事工程05 (大工工事・設備工事)

工事工程04 (大工工事・設備工事)

工事工程03 (大工工事)

工事工程02 (上棟)

工事工程01 (基礎工事)
工事工程00 (地鎮祭)
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現場敷地02 (解体工事)
現場敷地01 (現状)

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“The Urbanship in Nogata”

F邸新築工事 : コラボレーションプログラム
nano Architects x es design <プロジェクトコーディネイト、土地媒介、融資補助等>

この住宅プロジェクトは、コラボレーターである 「es design 」 さんとのコラボプロジェクトです。
お施主様に安心して、よりよい住環境を提供させていただくために、土地探しから、資金計画、融資関連、設計・監理、施工業者選定、アフターケアまで、プロジェクト全体のお手伝いを可能にする「コラボレーション」という形態で仕事をさせていただいております。

F邸
構造 : 木造2階建 在来工法
施工 : 西部ガスリビング㈱

 

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■ 近代日本の居住空間は、何を目指してきたのか?― 01 (概観)

9月 30th, 2013

 

近代日本の居住空間は、何を目指してきたのか?

■ 画一的・均質的な標準仕様を生み出した近代日本の居住空間は、いったい何を目指してつくられてきたのでしょうか?

今 世紀初めに始まった”リノベーション現象”は、戦後60年が過ぎ、やっとやってきた日本の居住空間の”ポップカルチャー化(大衆化)現象”であり、不動産 の”大衆解放運動”ではないかと思っています。戦後60年あまり、決して崩れることのなかった超保守的な不動産業界が作り上げた、全国一律の画一的、均質 的な居住空間に、”なぜこうも日本中どこにいっても同じような居住空間ばかりなのだ。もうこれ以上耐えられない。私の居住空間がほしい!”といった一部の 人々の拒絶反応が、自由に改装ができる中古物件と結びつき”リノベーション現象”として爆発、大衆に広がり始めているのです。

そこで、まず、全国どこででも見られる画一的・均質的な標準仕様で作られた日本の居住空間は、何を克服しようとし、何を目指してつくられてきたのかを考えてみましょう。

○ 近代日本の居住空間は、近代以前の居住空間の何を克服しようとしてきたのか?

1 村→都会:封建的家族形態の克服
近 代以降、人々は、田舎から都市へ大移動し、村的”家=血縁”から離脱、近代にふさわしい自由・平等の社会で独立した都会人になることを目指してきました。 大家族は徐々に解体、核家族単位で世帯を構成、経済発展と共に個室化、住居内に一人一空間を目指して広さを求めていきました。

2 忌→快、湿式→乾式:三大水回り忌避空間の克服
水回りの居住空間化。湿式→乾式工法へ。忌避的空間を技術力により克服し、快適な居住空間化を達成。家の”主人=(家長)”が夫から妻へ。

3 自然→人工:自然素材の経年変化、傷、汚れ等の克服
自然素材から、ラッピング・コーティング・化学処理をされた工業製品へ。自然素材なら当たり前の劣化、変形を技術力により克服し、傷の付かない、劣化、変形しない材料を開発。未来志向の科学技術礼賛時代。

4 伝統・経験則→構造力学、可燃→不燃:地震・火災の克服
耐震化、不燃化の法制化により、最低限の人命確保を法的に規定。公共の福祉の増進、都市災害の低減。

5 伝統技術→組立工法、地域性・個性→標準化:住宅不足の克服
都市問題である住宅不足を、工法の合理化、標準化、工業化により克服。日本は、止まらない都市化、長期に渡る高度経済成長を経て、世界でも有数の巨大都市”東京”を作り上げました。

6 耐え難い温熱環境の克服:快適性と省エネ
水回り同様、悩まされてきたのが夏の暑さと冬の寒さです。これらを克服すべく冷暖房機器の開発、断熱性の向上に邁進してきました。機械式空調設備前提の現代建築は、環境問題とエネルギー問題をかかえ岐路に立たされています。

7 和→洋:DKによる日本の伝統的生活様式の克服。
多目的畳空間から、西洋機能主義的一空間一機能へ。西洋のライフスタイルを目指し豊かさを求めてきました。

8 家電製品の発達による家事の重労働化の克服
居住空間も、社会も、ひたすら便利さを求めていく時代。重労働であった家事から女性を解放、独立、社会進出を支えています。

そのほか、次のような変化がありました。
畳 → フローリング
座卓+座布団 → テーブル+イス
布団 → ベッド
タイル → ユニットバス、パネル
換気扇 → シロッコファン
新壁 → 大壁
漆喰・土壁・モルタル+塗装 → ビニールクロス
本物 → プリント、ラッピング、コーティング

○ 近代的ライフスタイルへの移行
近 代日本の居住空間は、モダニズムが提示した自由・平等・独立、機能性・合理性、科学的客観性重視などの考え方をもとに、ライフスタイルを西洋化させるとい う目標を掲げましたが、現実には、変わることのない日本的部分を残しながら、日本独自の居住空間をつくりあげてきました。
都市化、つまり田舎から 都会への大移動の中、封建的な血縁に基づく”家”形態からの独立、核家族化による友達のような親子関係の構築、伝統的座卓に内在する上下関係をなくしDK によるテーブル+イスのアクティブ空間の定着化、厄介者であった水回り空間の快適化、機械化による家事の低減と主婦の復権、女性の社会進出など、サラリー マン4人家族を標準モデルとした社会政策をソフトインフラとし、都市の住宅不足解消、持ち家政策推進などの住宅政策と安定した生活の安全保障ともいえる終 身雇用的企業経営のなかでライフスタイルが確立してきました。

○ 裏方(忌避)空間であった水回りの居住空間化(快適化)
日本の居住空間の近代化は、忌避空間であった水回り”キッチン”、”トイレ”、”お風呂”を技術力で克服し、快適な居住空間化することであったといっても過言ではありません。
多 湿環境の中で、維持管理に大変苦労してきた水回りを、何とか快適な空間にしたいという国民全体の希望が、”湿式工法”から”乾式工法”へ、ひたすら製品、 工法の開発を促進してきました。多湿環境の中での水回り空間の快適な空間化が国民全体の悲願であり、建築の近代化の大きな目的・目標でした。そして、それ は、80年代半ばから90年代初め以降、ようやく成し遂げられたのです。

○ 建築材料:自然素材から、人工素材、工業製品へ
地産 地消を基本に使用してきた日本建築の素材である、木や藁、紙、土などは、都市化が急激に進む中で、不燃性、耐久性、メンテナンス性、施工性にすぐれた工業 製品に取って代わっていきます。新築の建物は機能的合理性と経済性を追求し積極的にこれらの素材を利用していきました。いつしか近代の日本建築は人工素材 で囲われた画一的、均質的な空間が標準仕様として確立していました。こうして大衆居住空間は、(特に投資目的の賃貸物件は)全国どこへ行っても同じような 空間になったのです。普通のアパート・マンションも、億ションも基本的な内装仕上げ項目を比較すれば、同じ仕上げが使われています。

○ DK
昭 和51年に発明された”2DK”は、限られた面積の中で食寝分離をどうにか成し遂げようとした結果誕生しました。狭いながらもダイニングに食卓テーブルを 置き、そこでアメリカ人のように食事をし、畳の部屋のうち一部屋は居間的に利用、夜は畳敷きの二部屋に布団をひいて寝るという生活が発明されたのです。当 時最もおしゃれなあこがれの夢のライフスタイルでした。台所は南側に設置され、裏方だった家事は家の中心的場所となり、徐々に家庭の中心は主婦になってい きました。
LDKは全国の都市住宅に浸透し、日本の当たり前な標準的間取りとなりました。

○ 耐震化、不燃化
1923 年9月1日、関東大震災。地震と火災による甚大なる被害をうけ、耐震化と不燃化なくして日本の都市建築は成り立たないことが判明しました。それ以降我々 は、地震、火災からいかに人命を守るのかを追求し続けています。その対策として有効に活用されたのが近代の三大素材、”鉄”、”ガラス”、”コンクリー ト”です。これらの新素材が新たな居住空間を形成し始めます。
急激な都市化とともに、地震による倒壊防止と火災の延焼防止のため、近代の三大素材 による建築の耐震化と不燃化が最優先政策として推し進められました。しかし、不燃化は日本の歴史・建築文化そのものである燃えやすい自然素材の否定につな がりました。また、自然素材の経年劣化、傷、汚れ、変形は、機能性、合理的観点から否定され、いつしか都市の居住空間から自然素材が消えていきました。し かし、日本人が持っている自然素材への憧れは消えることなく、絶え間なき努力による技術開発により、本物そっくりの、不燃化、高耐久の機能性に優れた人工 的工業製品が開発されています。

○ 標準化、組立工法
都市住居は急激な都市化による住宅不足により、建設工法の合理化と、間取り、素材、設備機器等、仕様の標準化を余儀なくされました。
昭和時代の都市問題であった慢性的住宅不足により、供給側、貸し手側(投資家側)有利の市場が戦後60年以上続き、全国一律の画一的間取り、均質的標準仕様の住宅が都市に大量に供給されていきました。

○ まとめ
近代以降、バブル崩壊までの昭和時代の日本は、ひたすら欧米に負けないような欧米風の近代国家にふさわしい、そして、世界第2位の経済大国にふさわしい、豊かなライフスタイルを演じられる居住空間を目指してきました。
上記のことをまとめると、近代日本の居住空間は、総じて次の三点を目指して作られてきたといっていいのではないでしょうか。

1,米型ライフスタイル
2,快適性と安全性
3,広さ

1,米型ライフスタイル
米 型ライフスタイルは、戦中悪用された過去の日本的なものと決別し、モダニズムを基礎とした、新しい国を創ってゆくという目的のため取り入れられた、お手本 となるあこがれのスタイルでした。いつしか米型ライフスタイルに追いつくことが国民の目標となり、豊かさ、幸せの価値基準となりました。
悪用された日本文化は、本来すばらしいものであったとしても、トラウマ的なものとなってしまい、忘れたい、距離をおきたいという希望もあり、悪しきもの、前近代的なもの、封建的なもの、反民主的なもの・・・として遠ざけられてしまいました。

2,快適性と安全性
耐震性・耐火性は大前提として必須事項であり、三大水回りの快適な居住空間化と暑さ寒さの克服は日本人の悲願でした。(もう昔にはなかなか戻れませんね)

3,広さ
住宅不足は慢性的都市問題した。経済大国になったにも関わらず、ウサギ小屋と揶揄された日本の居住空間でしたが、徐々に居住面積は広がり、一人一空間とれるだけの広さを獲得しました。
今では、必要以上の無駄な広さを求めるようなことも少なくなってきました。

○80 年代中から90年代初頃、国民全体の悲願であった水回りを居住空間に取り込むことに成功し、大衆居住空間の近代化は成し遂げられました。経済力も世界1位 となり、多くの人々が欲しい物を手に入れました。一人に一空間が割り当てられ、欧米のドラマを見てもスタイルの違いを感じるだけで生活水準的なうらやまし さはなくなりました。

21世紀に入り、気付いてみると”床”は余っていました。都市問題であった住宅不足は”床”面積だけをみれば、解決 されていたのです。住宅不足解消、それは人口減少時代に突入したことでもあります。有り余る老朽化した建物(外部不経済物件)をどうしてゆくのかなど、新 たな問題が顕在化してきています。

一方、時代の転換期を向かえ、不動産がやっと大衆に開放された日本。”次の時代”へ向けて、バブル崩壊 までの昭和的価値が過去の昔ばなしの一つでしかない若者たち主導の新しいムーブメントが全国各地で起こり始めています。まるで、日々が非日常的であった異 常な時代”昭和”から、日本人本来の日常生活を取り戻すように・・・。

 

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その他のコラムもご覧ください。
→ nano Architects : コラム

 

■ 直方-F邸新築工事01-敷地

9月 24th, 2013

■ 直方市内の住宅の新築工事-01:敷地

遠賀川河川敷近く、間口6.4mx17mほどの細長敷地。
写真中央、木造2階建ての住宅が建っているところが敷地です。
この建物を取り壊し、新しい住宅を建築します。

現在設計進行中。

■ 福岡県直方市  :  F邸新築工事

工事工程10 (完成)
工事工程09 (足場解体)

工事工程08 (足場解体前)

工事工程07 (内装工事)

工事工程06 (外壁工事)

工事工程05 (大工工事・設備工事)

工事工程04 (大工工事・設備工事)

工事工程03 (大工工事)

工事工程02 (上棟)

工事工程01 (基礎工事)
工事工程00 (地鎮祭)
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現場敷地02 (解体工事)
現場敷地01 (現状)

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“The Urbanship in Nogata”

F邸新築工事 : コラボレーションプログラム
nano Architects x es design <プロジェクトコーディネイト、土地媒介、融資補助等>

この住宅プロジェクトは、コラボレーターである 「es design 」 さんとのコラボプロジェクトです。
お施主様に安心して、よりよい住環境を提供させていただくために、土地探しから、資金計画、融資関連、設計・監理、施工業者選定、アフターケアまで、プロジェクト全体のお手伝いを可能にする「コラボレーション」という形態で仕事をさせていただいております。

F邸
構造 : 木造2階建 在来工法
施工 : 西部ガスリビング㈱

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なぜ彼らはこのような映画をつくりあげたのか・・・驚愕のモノクロ映画、三本

9月 8th, 2013

02年前・2011年 : “ニーチェの馬” : タル・ベーラ : ハンガリー

53年前・1960年 : “裸の島” : 新藤兼人 : 日本

88年前・1925年: “戦艦ポチョムキン” : セルゲイ・エイゼンシュテイン : ソビエト

心配になるほど長・・・い ワンカット。こんな長回し映画がありえるのかというような”ニーチェの馬”。
それに対して、短い細切れのカットをリズミカルにつないでゆく”裸の島”。
対極にある表現手法でつくられた二本のモノクロ映画。

共通点は、言葉(セリフ)が異常に少ない。”ニーチェの馬”は中盤から後半にかけて、効果的に印象的な言葉があるのだが、”裸の島”は、全くなかった!背景には過酷な自然を表現する曲が環境音楽のように連続して響いているだけ。

次の共通点は、かこくな自然と家族。”ニーチェの馬”は、いつ止むとも知れぬ激しい風が吹き荒れる石造りの母屋に暮らす貧しい親子。”裸の島”は、瀬戸内海の電気・ガス・水道がない周囲約500メートルの小島(広島県三原市にある宿彌島(すくねじま))の高台、木造の掘っ立て小屋に住む貧しい家族4人(夫婦と男の子2人)。乾いた土の畑に隣島より桶に入れて櫓漕ぎ舟で運んだ水を、島の急斜面を天秤棒を担いで運び上げるという過酷な自然の中で暮らしているのだ。

しかし、描いている自然の意味、家族像は表現同様対極的。タル・ベーラ監督は終末的黙示録を描いているが、新藤兼人監督は過酷な自然の中、貧しいながらもひたむきに生きる家族の姿を愛情を持って描いている。

そして、この対極にある表現と意味、共通点ももった二本の映画の源流、それが ”戦艦ポチョムキン”。88年前に作られたとは思えないモンタージュ手法を確立したサイレント映画。

これを源流に、53年前につくられた”裸の島”。2年前につくられた”ニーチェの馬”。この三本のモノクロ映画は、年代、手法、目的は違えども、余計な装飾を削り去ったむき出しの表現により、自然とはなにか、人(生きる)とはなにか、社会とは何か、を突きつける映画だった。

“ニーチェの馬”:2011年・第61回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員特別賞)
“裸の島”:1961年・モスクワ国際映画祭グランプリ
“戦艦ポチョムキン”

■ T邸-リノベーション工事 – 工事工程16 (小物・金物等取付工事)

7月 16th, 2013

■ 福岡市内のマンション、T邸のリノベーション工事

意外と難しいのが、生活をさり気なく影で支えている小物や金物、アクセサリー類です。
生活とは、細やかな作業の連続であり、小さい機能の蓄積であり、ちょっとした差により快適性や機能性が変わってきます。
いくつか、これらの細部を見てみましょう。

○押入れ換気口取付け

 
↑ 湿気がこもらないように押入れに換気口をつけました。床部分に見えるのは床下収納。

 
↑ 左:トイレドア上部に取り付けられた、アームストッパー。右:新たにドアに取り付けられた自動キャッチ式戸当り。


↑ トイレ内ウォシュレット用リモコン。実際に座っていただき、位置を確認した後取付け。
日々使うウォシュレットリモコンを、どこに取り付けるのかは、いくつか候補があり迷うところです。
勝手に取り付けることはせず、お客様のご意見をお聞きしながら現場で実際に座っていただき、
決めるようにしています。


↑ タオル掛け。三面鏡の扉に当たらず、下のカウンターに掛けたタオルがぶつからないような高さに
取り付けています。これも、お客様と現場で実際に位置を打ち合わせした後に取り付けています。

 

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■ T邸 – リノベーション工事 – 工事工程

工事工程16 (小物・金物等取付工事)
工事工程15 (洗面台三面鏡移動工事)

工事工程14 (キッチン取付工事)
工事工程13 (建具シート張り工事)

工事工程12 (バーチカルブラインド取付工事)

工事工程11 (住設機器取付工事)

工事工程10 (大工/クロス/IKEA家具/ガス/畳工事)

工事工程09 (大工工事・クロス工事)

工事工程08 (大工工事)

工事工程07 (鋼製建具取付・大工工事)

工事工程06 (大工工事:畳敷き小上がり部製作)

工事工程05 (UB設置・大工工事)

工事工程04 (フローリング張り)

工事工程03 (墨出・配管・電気工事)

工事工程02 (墨出・配管・電気工事)

工事工程01 (解体工事)

 

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T邸-リノベーション工事
場所:福岡市内
用途:分譲マンション築20年
設計:nano Architects

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■ T邸-リノベーション工事 – 工事工程15 (洗面台三面鏡移動工事)

7月 8th, 2013

■ 福岡市内のマンション、T邸のリノベーション工事

○洗面台三面鏡移動工事

既存洗面台の上部には梁がありました。
床面から梁下まで H=1905~1910程度しか無かったため、取付けできないということになり、洗面台の三面鏡を高さの低いタイプにしました。
三面鏡を設置し、鏡に写る姿を見ると、三面鏡の高さを低くしたために、ご主人と息子さんの頭が切れてしまいました。
そこで、三面鏡をできるだけ上に移動し、洗面台と三面鏡の間はアルミ調のメラミン化粧板で埋めることにしました。
 
↑ 左:三面鏡を梁下ギリギリまで上に移動設置。右:三面鏡と洗面台の間にできた隙間。

 
↑ 左:下地の木軸を取付け。右:その上に合板設置。

 
↑ 左:アルミ調のメラミン化粧板を取付け、隙間をシール。 右:工事完了。


↑ 三面鏡と洗面台の隙間がアルミ調のメラミン化粧板で違和感なくきれいに埋まりました。


↑ これで、ご主人、息子さんの顔全体が鏡に写るようになりました。

 

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■ T邸 – リノベーション工事 – 工事工程

工事工程16 (小物・金物等取付工事)
工事工程15 (洗面台三面鏡移動工事)

工事工程14 (キッチン取付工事)
工事工程13 (建具シート張り工事)

工事工程12 (バーチカルブラインド取付工事)

工事工程11 (住設機器取付工事)

工事工程10 (大工/クロス/IKEA家具/ガス/畳工事)

工事工程09 (大工工事・クロス工事)

工事工程08 (大工工事)

工事工程07 (鋼製建具取付・大工工事)

工事工程06 (大工工事:畳敷き小上がり部製作)

工事工程05 (UB設置・大工工事)

工事工程04 (フローリング張り)

工事工程03 (墨出・配管・電気工事)

工事工程02 (墨出・配管・電気工事)

工事工程01 (解体工事)

 

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T邸-リノベーション工事
場所:福岡市内
用途:分譲マンション築20年
設計:nano Architects

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■ T邸-リノベーション工事 – 工事工程14 (キッチン取付工事)

6月 28th, 2013

■ 福岡市内のマンション、T邸のリノベーション工事

○キッチン取付工事

キッチンは、福岡のオーダーキッチンメーカ「プランナーズジャパン㈱」にお願いしました。
オーナー様と数度に渡る詳細な打ち合わせを経て、決定したキッチンの取付工事です。

キッチンはいくつかの箱状のパーツに分かれています。それを現場に搬入し、組み立てて取り付けします。


↑ カップボードの取付け


↑ レンジフード、引出しなどのキッチン部材。キッチンパネルであるアイカセラールを切断。


↑ キッチンパネルの貼り付け。キッチンの設置。


↑ キッチンパネル張り


↑ キッチン、カップボード取付け完了

■プランナーズジャパン㈱、オーダーキッチン
○システムキッチン:W2595 H850 D730
・天板:ステンレスヴァイブレーション仕上げ
・ガスコンロ:W750、ガラストップ、無水両面焼きグリル
・フィルターレスレンジフード
・食器洗い乾燥器
・扉:UV磨き塗装、把手:手がかり
・巾木収納等、引出し収納
・水栓:ハンドシャワーシングルレバー混合水栓
・その他:包丁差し、ハンガーパイプ、タオル掛け、耐震ラッチ
・キッチンパネル:アイカセラール

○カップボード:W2100 H1950 D600
・天板:ステンレスヴァイブレーション仕上げ
・扉:UV磨き塗装、把手:手がかり
・カップボード引き戸:アルミ枠+透明ガラス+フィルム貼り
・炊飯器置き場:スライドテーブル
・食品庫:インナーケース
・ワイングラス吊り金具
・キッチンパネル:アイカセラール
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■ T邸 – リノベーション工事 – 工事工程

工事工程16 (小物・金物等取付工事)
工事工程15 (洗面台三面鏡移動工事)

工事工程14 (キッチン取付工事)
工事工程13 (建具シート張り工事)

工事工程12 (バーチカルブラインド取付工事)

工事工程11 (住設機器取付工事)

工事工程10 (大工/クロス/IKEA家具/ガス/畳工事)

工事工程09 (大工工事・クロス工事)

工事工程08 (大工工事)

工事工程07 (鋼製建具取付・大工工事)

工事工程06 (大工工事:畳敷き小上がり部製作)

工事工程05 (UB設置・大工工事)

工事工程04 (フローリング張り)

工事工程03 (墨出・配管・電気工事)

工事工程02 (墨出・配管・電気工事)

工事工程01 (解体工事)

 

 

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T邸-リノベーション工事
場所:福岡市内
用途:分譲マンション築20年
設計:nano Architects

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