■ 福岡ビンテージビルカレッジ / 第1回 「私のVINTAGE LIFE」 ― ご報告と私の感想

1月 22nd, 2013

福岡ビンテージビルカレッジ 第1回「私のVINTAGE LIFE」 ― ご報告と私の感想

← 会場:山王マンション1F

■福岡ビンテージビルカレッジの主旨
ビンテージビルカレッジの主旨は、ビンテージという概念がまだ無い”ビル(建物)”の分野で、どのようにすれば”ビル(建物)”のビンテージ文化をつくれるのか?を、すでに社会に定着している、他分野のビンテージ文化の”感覚”を学ぶことにより、考えていこうというものです。また、産業構造の変化により、ソーシャルビジネスが広がっている中で、新しく創りだされた様々な分野のビンテージ文化が、社会性のあるビジネスと適度に結びつくことにより、持続的、安定的に社会に普及し、日常生活を支えるそれぞれの街や地区を魅力あるものへと導くような文化として成長する可能性があるのではないか?といったことも同時に考えていきたいと思っております。

福岡ビンテージビルカレッジの第1回目として、「AMP GALLERY & CAFE’・アトリエてらた」のオーナー兼デザイナー兼ミュージッシャン、または、プロの遊び人とも呼ばれる瀬下氏による、エレキギター、ジーパン、スカジャンなどのビンテージについてのお話をしていただきました。今回の「続・山王R」において、リノベーションデザイナー4人の中のお一人として一部屋のリノベーションをご担当され、デザインのみならず、セルフビルドでご自身自ら塗装をされ、部屋全体をアートで装った、カレッジでお話くださった世界観そのものであるミッドセンチェリー感=つまりビンテージ感あふれる空間を創作されております。このお部屋を意味づける大切なアイテムとして、これからお話になる、ビンテージ・エレキギター、ジーパン、スカジャンなどが、そのために意図してつくられたスペースにディスプレイされていました。

■瀬下氏のビンテージのお話
瀬下氏のお話はまずビートルズ時代のビンテージ・エレキギターから始まりました。お話をお伺いしていると、それは、エレキギターそのものだけではなく、ビートルズが活躍していた頃の”時代の息吹”や”社会の雰囲気”みたいなもの、当時の文化全体へのオマージュが基礎となっていることがわかります。

○ビンテージ・エレキギター
お好きなビートルズ時代のビンテージ・エレキギターを購入し、それを使い込んで熟成させていきます。大切に見守りながら10年程度経過した頃、表面の塗装面にピリッと”割れ”が生じてくるそうです。マニアにとってその”割れ”が何ともいえないそうで、その”割れ”を見ながらお酒を飲むのが何ともいえない至福の時間とのことです(笑)。

楽器に関しては、”音”もビンテージに含まれます。実際に、新しいエレキギターの音とビンテージ・エレキギターの音を出していただき、聞き比べをしました。古いエレキギターの音は、確かに新しいものとは異なり、マイルドでやさしい音でした。ビートルズが活躍していたころの雰囲気を出すには、当時の機器がどうしても必要とのこと。エレキギターを取り巻く周辺機器が揃うことにより、当時の”音”を再現することができるんですね。これは、楽器や服に限らず、その他のビンテージ品、もちろん”ビル(建物)”にも当てはまることといえそうです。

○ビンテージ・ジーパン、スカジャン
次に、ジーパン、スカジャンに関してです。ビンテージ文化の特徴をよく表している、おもしろいエピソードのお話がありました。価値の高いジーパンやスカジャンのビンテージコレクションを無造作に押入にしまっておいたところ、お母さんが、このボロは捨てていいのだろうということで、何着かは断りもなく捨てられてしまったそうです(笑)。マニア以外の方々には単なる小汚いボロに見えるジーパンやスカジャンですが、ビンテージ相場でいえば10万円程度するものだったとのことでした。これらは、保存の程度やダメージ具合などで、人によって評価基準が変わるようですが、そのモノ自体、そして、その状態の価値基準は、総じて共有され、評価基準に沿って実際に取り引きされているとのことです。

こういったエピソードをお聞きすると、ビンテージ文化が一般常識にとらわれることなく、”ビンテージ的目利き”ともいえる確かな”目”をお持ちの魅力ある人々により支えられ、価値を広く共有することによりビジネス的にも確立していることがわかります。
お話をお伺いしていると、ビンテージ品が存在していた当時の”時代の息吹”や”社会の雰囲気”みたいなものが、いかに大切なものであるのかがわかってきました。当時の素材、製法や工法、道具や加工機械、それらを実際に作っていた当時の職人、そして、流通を通し購入し実際に使っていた人々、その時代ならではの裏エピソードなど、当時のモノを取り巻く文化全体の物語がビンテージ品に価値を与え、支えになっているようです。そのモノを取り巻く文化全体の物語、つまり”ビンテージ的世界観”みたいなものがビンテージ品の”背景”として価値をさらに高め、人々を魅惑の世界へと誘ってゆくのだと感じました。

■ビンテージ的感覚要素
瀬下氏のお話を参考に、さらに踏み込んで、ビンテージ的感覚の要素について考えてみます。モノ(製品や建物も)は、素材(物質)、デザイン(かたち・フォルム)、機能(用途)などで構成されていますが、感性に訴えてくるビンテージ品に関しては、機能、デザインを含めたフォルムはもちろんのことですが、基本的なところで全体の質や雰囲気を決める”素材感”や”質感”、もっと突き詰めればモノが物体であることを示す”物質感”が価値におおきく影響しているように感じています。

簡単に振り返ってみると、自然界の素材のみをそのまま活用していた時代から、近代を向かえ化学的な合成技術の発達により多くの新素材が、新しい機能を持ったモノのために、めまぐるしく時代が進む中で時に流行を生みながら、新工法、新しいデザインとともに作り出されていきました。(考えてみると次々に新素材が生み出される現代は、時として素材が時代性を表すこともあります。)近代とは、人工物質・新素材時代ともいえそうです。(当然ながら、自然素材でも人々を魅了する新商品は次々に生み出されています。)

次々に生み出されいくモノの中には、人々の感性に響く、特別な輝きを発する存在感が突出したモノも生み出されました。どのようなモノでも、新素材・自然素材関わらず”物質”でできています。それを素材にデザインや機能を付加しモノ(製品や建物)になるのですが、ビンテージ的感性に響いてくる特別な存在感を示す要素として、視覚から始まり”手触り”や”耳触り”、”におい”など様々な感覚に訴える”素材感”や”質感”、さらに言えばその元となる”物質感”が大きな影響を与えているように感じられました。めまぐるしく時代が変わっていく中で、いつしかそれらのうちの幾つかは、心の琴線を揺さぶリ続けるビンテージとして残っていき、ビンテージ文化として成長、確立しています。

■背後の世界観
ジーパンに関しては、ダメージ仕上げという、真新しい素材にわざとダメージを与えて使いこんだ状態に仕上げるという加工技術もあるとのことです。一般人にとっては、新しいものに傷を付けるというちょっと心が痛む後ろめたさみたいなものがありますが、マニアの皆さんにとっては、そのダメージ感覚が大きく感性を揺さぶるようなのです。
上記の”物質感”につながりますが、もしかすると、このダメージ仕上げは、建物でいえば、最近の(特に若者たち)廃墟ブーム等に見られる、古く寂れた”はかなさ”みたいなものに心引かれる現象に関連があるかもしれません。新製品消費時代から逆行する、このようなダメージ仕上げや古着ブームから、家具、インテリア、建築に感覚が広まっていったといっても良いかもしれません。

これは、ちょっと飛躍し過ぎかもしれませんが、私が子供の頃に胸踊らせた大阪万博的”輝かしい未来”志向から、宮崎アニメの設定に見られる、”行きすぎた文明の果ての破滅(と、その後の世界)”志向へと、時代感覚が移行していった結果と見ることはできないでしょうか?未来志向の新しいモノより、朽ちてしまいそうな古いモノの奥に見隠れする”物語”に感性は揺さぶられ、引き寄せられているようです。”ビンテージ的感覚”とは、”物質感”を基礎とした古いモノ自体に魅了される感覚に加え、モノの裏に見え隠れする物語により自然に感性が刺激され、ふくらんでいく想像力により作り出された”独自のビンテージ的世界観”、その”独自のビンテージ的世界観”も含めて古いモノを楽しむ感覚のようです。

■貞國氏と青木氏のご登壇
瀬下氏のお話後半、福岡でご活躍の「スタジオアパートメントKICHI」の貞國氏と東京でご活躍の「㈱メゾン青樹」の青木氏のご登壇となりました。お二人ともにビンテージビルなど古い建物はもちろんのこと、当時の文化全体がお好きで、確かな”目”をお持ちの方々です。それぞれのお仕事内容や、瀬下さんのデザインなさったリノベーションルームの素晴らしさなどを語っていただきました。

貞國氏は、ご自身で所有運営なさっている、音楽、アート、ファッション、デザイン、パフォーマンス、建築家、漫画家など、あらゆるアーティストがジャンルの壁を越えて潜伏している、アーティストのための賃貸マンション「アパートメントKICHI」の取り組みや、古いモノの魅力などを話されました。
そして、東京からのご参加の青木氏は、ご自身で所有管理されているビンテージビルの魅力と意欲的な取り組みなどの興味深いお話や、ストレートに魅了された、瀬下氏ご担当のリノベーションルームについて、瀬下氏が意図したポイントを的確につかんだ上でのご感想を、表現豊かに話してくださりました。私には、お二人の話している姿が、先ほど瀬下氏がビンテージギターやジーパン、スカジャンを噛み締めるように楽しく語る姿と重なってみえました。
瀬下氏、貞國氏、青木氏それぞれのお話や会話のように、つまり、ビンテージ文化とは、ビンテージが好きで、その”感覚”を共有した人々による”語り”を楽しみながら、”交流”を広げていけるような文化ではないでしょうか。

■グループ討議
次に、約60名ご参加の皆様に5,6名のグループに分かれていただき、グループ討議をしていただきました。

議題は”自分の趣味について語り合うこと”です。
ビンテージ文化とは、簡単にいえば、好きなものについて価値を共有し、楽しみあうことです。これは、これからのストック時代には、最も重要なことかもしれません。右肩上がりではない、水平飛行が普通の世界で、仕事と同様に日々の生活が重要な中で、生活の糧となるような”趣味”の”有る/無し”が”幸福度”指標に大きく関わってきそうだからです。多くの若者たちが、「自分の好きなことがそのまま仕事にらないかなあー」と、淡い夢を抱いています。それは、そうなることが幸せなことであると考えているからでしょう。自分とは何かを、つまり自己の確立を、ある意味脅迫的に迫られる現在において、もっとも大きなテーマのようにも思います。そのような意味もあり、自分の内側から出てくる気持ちで成り立つ”趣味”が、もし、ビジネスと結びつくような文化が広まれば、みなさんにとって幸福で充実した生活ができる社会になるように思います。(淡い夢かもしれませんが)

グループ討議の発表では、DIYのお話や、料理づくりなどのお話が出てきました。それは、自分たちで生活を豊かにしていこう、趣味を通してつながりをもてる社会にしていこうという(その場では漠然としていましたが)意図を見出すことができます。これからの社会の方向性として、これら各個人の趣味により新しく創りだされた(例えばビンテージ)文化が社会性のあるビジネスと結びつくことにより、日々の生活を地域内で楽しみながら文化面と経済面の両面で交流していけるような社会になるのではないか?という可能性についてもこれからの課題として取り上げられました。

今まで同様、新しいモノは作り出されていくでしょうが、一方で、古いモノの価値を独自の感性で定義づけるビンテージ文化は、昭和時代ほど新品の価値が高くなく、古いモノに価値を見出せる感性を持っている人々がますます増えていくこれからのストック社会の標準的な感覚を秩序づけ表現する基礎的文化となるように思います。

■最後に
ビンテージビル文化が広まり定着することがビルストック時代には必要です。なぜなら、普通に半世紀以上、できれば一世紀近く建物を活用していくビルストック時代には、時間の経過とともに自動的に価値が減少していくような今までの一般常識とは別の論理が必要だからです。ビンテージ文化は、時間の経過のみで一律に価値が減少するようなことはありません。そのモノの”質”を”ビンテージ的目利き”ともいえる”独自の感性”で定義づけるものです。時間の経過で価値が減少する単純な反比例関係とは別の、”質”を”独自の感性”で定義づける”ビンテージ的評価基準”が一般化し、標準的な価値基準となることが、これからのビルストック時代には必要ではないでしょうか。

このようなビンテージビル文化の広がりは、建物好きな人々が増えることであり、街を好きな人々が増えることであり、なにより、そこで生活することが好きな人々が増えることです。その結果、ビンテージビル文化度の高い街は、魅力的な建物、そして、街並みが維持されることにつながり、充実した暮らしがあふれる街になることでしょう。

あまり打ち合わせもなく、行き当たりばったりで進められた第1回ビンテージカレッジ、吉原住宅(有)の吉原氏の臨機応変な進行で、なんとか終えることができました(笑)。ご参加のみなさま、発表していただきました皆様、ありがとうございました、そして、お疲れ様でした。

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福岡ビンテージビルカレッジ:http://www.space-r.net/bunkasai/college
第1回 私のVINTAGE LIFE / 2012年12月16日(日)
主催:NPO法人 福岡ビルストック研究会/(株)スペースRデザイン/吉原住宅(有)
コーディネーター:吉原勝己氏(吉原住宅(有)代表取締役)/信濃康博(信濃設計研究所所長)
場所:山王マンション/1F

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次回以降
第2回 オフィス文化から生まれるビンテージ / 2013年1月19日(土)
第3回 食文化から生まれるビンテージ / 2013年2月2日(土)
第4回 京都のビンテージが生みだす都市再生 / 2013年3月9日(土)
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こちらもご覧ください
>>福岡ビンテージビルカレッジ / 第1回 「私のVINTAGE LIFE」 ― ご報告と私の感想
>>福岡ビンテージビルカレッジ / 第2回 「オフィス文化から生まれるビンテージ」 ― ご報告と私の感想
>>福岡ビンテージビルカレッジ / 第3回 「食文化から生まれるビンテージ」 ― ご報告と私の感想

 

 

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生き残った 「東京駅丸の内駅舎」

1月 17th, 2013

■ 正月休みに「東京駅丸の内駅舎」を見学してきました。

私が学生だったバブルの頃、「保存か、建て替えか、論争」をしていたのを覚えています。結果、100年間生き残り、大工事により昨年新築当時の姿に生まれ変わりました。近代建築は、最長何年生き延びることができるのでしょうか?

東京駅丸の内駅舎全体を眺めるには、引きの空間が必要です。東京駅らしく駅前には十分な空間がありますが、左右地上部分に大きく飛び出した工作物があるために、駅舎全体を楽しむことができません。これらが必要なのはわかりますが、どうにかならないものでしょうか?とにかく、もったいない。
駅前広場の計画案は見たことないのですが、どのように計画が進んでいるんでしょう。

駅舎内には”東京ステーションギャラリー”があり、ここしかない荒々しい古いレンガむき出しの独特の雰囲気が好きで、よく行っていました。新しい”東京ステーションギャラリー”へはいけなかったのですが、また時間を見つけて行ってみたいと思います。

東京駅今昔物語 http://www.iza.ne.jp/event/photo/tokyosta03.html

 

 

 

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グッドデザイン賞 2012

1月 11th, 2013


昨年11月グッドデザイン賞の発表があり、コーポラティブヴィレッジ春日原南町8街区「なないろガーデン」がグッドデザイン賞をいただくことができました。

■ グッドデザイン賞の公式サイトです。他の作品も閲覧することができますのでお楽しみください。
GOOD DESIGN AWARD 2012   → http://www.g-mark.org/award/describe/38968

■ 概要
本物件は都心部近郊の戸建社宅跡地を、周辺地域を含めた住環境、バランスのとれた事業性、一般所得層の購入できる価格に配慮し、コーポラティブの手法を用 いて7戸の戸建住宅群としたものである。計画地は福岡都市圏中心部への交通アクセスが非常によく、生活利便性の高いエリアである。そのため、地価の高騰・ 戸建ミニ開発やマンション開発の乱立・高齢化や転住者の増加による地域コミュニティの希薄化等が進んでいる。本計画では、限られた敷地で7世帯が少しずつ 土地を提供し、敷地の中心に様々な目的・用途をもった中間領域を設定することで、豊かな住環境の確保と周辺地域との良好な関係を、コーポラティブの手法を 用いて実現している。

■プロジェクトメンバー
コーディネイト:株式会社 エス・コンセプト
土地媒介:九電不動産 株式会社
全体計画:株式会社 建築デザイン工房 谷口遵
住戸設計:
・ 信濃設計研究所 信濃康博
・ 渋田建築計画事務所 渋田耕治
・ h2 Architect 蓮子龍美
・ 有限会社ズーク 有吉兼次
施工:株式会社 斉藤工務店

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■ プロジェクトの始まり
コーポラティブ方式の戸建て住宅群の開発プロジェクト、「コーポラティブヴィレッジ春日原南町」は、2006年より始まりました。
今回のⅣ期8街区を含め合計32戸の住宅が同一町内の「春日原南町」に完成しています。
私の事務所では、この32戸のうち13戸を設計させていただきました。

■ プロジェクト全体の概要
2006年から始まった本プロジェクトは、春日市春日原南町内の敷地にて、全8街区、4期にわたり実施されました。

街区
戸数
設計戸数 竣工 街区名称
Ⅰ期 1街区 6戸 内3戸設計 2007年/春 →「ガルデンカスガ」
Ⅱ期 2街区 3戸 2007年/夏
3街区 2戸 内2戸設計   〃 →「MS.harmony」 
4街区 3戸 内2戸設計   〃 →「CLOVER VILLAGE」 
5街区 3戸   〃
Ⅲ期 6街区 4戸 内2戸設計 2009年/春 →「FOUR SEASONS VILLAGE」 
Ⅳ期 7街区 4戸 内1戸設計 2011年/春 →「春日原小路」 
8街区 7戸 内3戸設計 2012年/春 「なないろガーデン」
→Mo邸→Nu邸→Mu邸

■ 8街区
今回の8街区は、プロジェクト全体でみても、一つの街区に最も多い7戸の住戸が建てられました。
私は7戸中3戸を担当させて頂きました。

 

 

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長崎県松浦市-04:昭和モダニズムRC集合住宅-再生A

1月 9th, 2013

■ 前回、[長崎県松浦市-03:昭和モダニズムRC集合住宅]で、存在感あふれる昭和モダニズム経年物件のご紹介をしました。その最後の一文に『まだ利用されているこの近代ビルヂング、まだまだ利用できそうです。化粧直しだけでもすれば、一気に若返えるのですが・・・』と書きました。
→ ということで、今回、建設当時から数年を経て、ちょっと汚れがついてきたぐらいの、若かりし頃の姿を再現してみました。


↑ 若かりし頃のビル。この街に、新しい時代の到来を告げる、モダニズム精神の象徴となっていたにちがいない。


↑ 現在の状況。異様なる存在感溢れる昭和モダニズム建築。集合住宅としてまだ生きています。
建設当時とくらべ、周囲に与える影響の方向性が変化している。

■ビルストック時代を迎えまだ日の浅い日本では、ビルの再生は幾つものハードルが立ちふさがり困難を極めています。
はたして、どのように経年物件の建築たちを有効に活用していけば良いのでしょうか?

この写真のように身近な建物を化粧しなおしてみる。これだけでも建物が周囲にあたえる影響は変わってきます。
個人、団体等の所有物であり、他の個人・団体が、とやかくいう権利はあまり認められていませんが、周囲にあたえる影響は大きいので、時代の流れとしては、あまりにもノイズを発するものは、ある程度の介入が許されるように動いてきています。(特に廃墟やゴミ屋敷などの外部不経済物件)
また、建物単体で勝手に考えるのではなく、その周辺の価値、点から面的価値の確保が求めれられる時代にもなっています。建物とその周辺、点から面へとイメージを拡大させることがストック時代には必要になってきます。

 

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長崎県松浦市-04:昭和モダニズムRC集合住宅-再生A
長崎県松浦市-03:昭和モダニズムRC集合住宅
長崎県松浦市-02:「ARIGATO」
長崎県松浦市-01:「西肥バス・松浦ターミナル」

 

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街角の名も無き建築物-02

1月 5th, 2013

■ 給水塔


↑ 交通量の激しい17号線に沿って建設された「上尾白小鳩団地」(全35号棟)の西日に照らされた給水塔

同じ”箱”が画一的に建ち並ぶスケールアウトした風景の団地の中で、唯一、シンボリックに自己主張しているのが「給水塔」です。重力に逆らってそそり立つ「塔」というのは、それだけで用途やかたち、デザインに関係なく、人々の視線を奪い、何かしらの示唆を与えてくれます。

3本の組み柱により構成されています。みたところジョイント部分にはボルトが見えませんので、溶接で剛接合されているようです。このボルトレスの柱と梁の接合部(ディテール)が、シンプルでスッキリした印象を与えるデザインとなっています。シルバーの塗装が綺麗でサビの跡も見えないので、定期的に補修されているようです。
3本組み柱内の数本の配管も見逃せません。これは単なる塔ではなく、各住戸に給水するという重要なライフラインです。これらの配管類はこの塔がこの団地の住民の生活を支えていることを表現しています。
頂部、水槽を支える斜材が、やはり溶接で取り付けられているため、スッキリしたディテールになっています。この斜材は構造的に必要であったかどうかはわかりませんが、デザイン的にあったほうがいいのか、なかったほうがいいのか、意見が別れるところでしょう。
そして水槽を隠している紙コップ形の逆円錐形のカバー。このシルバーのシンプルな幾何学形のデザインが「聖火台」のようで、今にも炎が出てきそうです。この板金加工で作られた逆円錐形部分は職人さんの苦労のあとがみてとれます。多少無理に曲げられた板金の適度なヨレヨレ感、デザインポイントにもなっている適度な間隔で横縞を構成している板金ジョイント、これらに西日があたり鈍く反射するシルバー色、これらが頂部の独特な魅力となっています。

給水塔は、高い位置に水を貯めて重力により水圧を確保し各住棟・住戸に給水するために作られたものです。(現在は、電動のポンプで水圧を確保し給水しているので、給水塔や高架水槽は作られなくなりました。) もしかすると、少し大げさかもしれませんが、水がなければ生きていくことのできない私達にとって、給水塔からすべての住戸に水が送られているという意味において、団地住民のみなさんは、自分たちみんなの命を守ってくれている塔、いわば”いのちの塔”的なものを感じとり、特別な感情をもって眺めていたかもしれません。

○場所:上尾白小鳩団地・給水塔

○「上尾白小鳩団地」
ちなみに上尾白小鳩団地は、昭和42年に行われた埼玉国体の際に選手村として造成された場所で、国体終了後に県営団地として転用されました。白小鳩団地の名称は、当時選手村を「しらこばと村」と呼んでいたことが元らしいです。

○給水塔マップがありました。(笑)
塔マップ | あのタワーを忘れない:http://tower.30maps.com/

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長崎県松浦市-03:昭和モダニズムRC集合住宅

12月 27th, 2012

■ 異様な存在感がある建物でした。これが、鉄筋コンクリート造の昭和モダニズム建築の、経年劣化的魅力なんでしょう。
汚れた壁面、錆びたスチールの手摺、外部花台窓に置かれたむき出しの室外機と配管、そしてアンテナ、いろんな所からひっぱられ複雑に絡み合う電線と道路の向かい側から伸びる電話線、かつての店舗がそのまま残りガチャガチャな1階テナント部分。割られたままの階段室スチール嵌殺し窓のガラス。
かつてこの建物が、日本家屋の建ち並ぶ街並みに唐突現れた、この街で最もモダンでおしゃれな憧れのビルだったといっても信じてもらえないのも納得できるほどの劣化状態です。しかし、このノイズともいってもいい異様な存在感に多くの若者たちが引きつけられています。まだ価値はありそうだ。
 

↑ 耐震・不燃化した初期の昭和モダニズムRC集合住宅では、バルコニーはなく、植木鉢程度が置ける窓の外に飛び出した手摺付きの花台窓が取り付けられることが多かった。
 

↑ 道路側の壁面より、明らかに異なる真っ黒な側面壁が異様さを増幅しています。
わざわざ道路の向かい側から引き込んでいるのは、なんの配線なんだろうかと思っていましたが、どうも電話線のようです。
 
まだ利用されているこの近代ビルヂング、まだまだ利用できそうです。化粧直しだけでもすれば、一気に若返えるのですが・・・
 
 

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長崎県松浦市-04:昭和モダニズムRC集合住宅-再生A
長崎県松浦市-03:昭和モダニズムRC集合住宅
長崎県松浦市-02:「ARIGATO」
長崎県松浦市-01:「西肥バス・松浦ターミナル」

  
 

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「続・山王R」10:照明工事/カーテン工事

12月 19th, 2012

■ 山王マンション305号室、照明工事、カーテン取付工事が行われました。


↑ 照明が取り付けられました。


↑ 照明の大きさは3種類、高さも変えています。


↑ 電線管の経路をデザインし、玄関側から窓側まで連続するようにしています。その中に5つの連結場所に5つの照明をぶら下げました。これは、山王マンションが生き抜いてきた45年「1967年→70年→80年→90年→00年→10年→2012年」を表しています。


↑ ストリングカーテン

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10-照明工事/カーテン工事
09-カーテンレール取付工事/エアコン工事
08-塗装工事
07-電線管
06-大工工事2
05-大工工事
04- 新設配管工事
03- 解体工事2
02- 現場見学
01- 解体工事1

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「続・山王R~NEW STANDARD RENOVATION~」:山王マンションリノベーションⅢ
場所:福岡県福岡市
山王マンション:築45年、RC6階建
元間取:3DK-48平米
所有:吉原住宅㈱
運営:㈱スペースR デザイン
施工:シーズ・クリエイションズ㈱(Shii’s Creations)
設計:信濃設計研究所/nano Architects

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「続・山王R」09:カーテンレール取付工事/エアコン工事

12月 18th, 2012

■ 山王マンション305号室、カーテンレールを取付工事、エアコン工事が行われました。


↑ 曲面壁の外側に、曲がるカーテンレールを取付


↑ 三角形部分に穴をけて、エアコンのホース(冷媒管+ドレン管)を入れ込んでいるところ


↑ エアコンのホース入れ込み。


↑ エアコン室内機を取付
昔の集合住宅では、バルコニーが無い物件も標準的にありました。プランもコの字型プランやロの字型プランの物件も多く、内側が公園だったりする場合も多々ありました。

「山王マンション」は、コの字型プランで、内側は現在駐車場として利用されています。
オフィスビルのような外観で、重厚感、威厳あるタイルの外壁に横長連続窓が付き、住居の用途とはわからないような外観です。反面、コの字型プランの内側に入ると、手摺に洗濯物が干してあるような、生活感丸出しの空間になっていました。

バルコニーが無いと困ることがあります。一つは洗濯物が外に干せないこと、もうひとつは、エアコン取付です。バルコニーに室外機が置けないために、上階は屋上に室外機を置いたり、下階は地面に(室外機を)置いたり、中間階は室外機が要らない窓付エアコンを取り付けたりしています。この部屋では、外廊下にエアコン室外機を置き、室内機を部屋の形状に合わせて方向を決めて、三角形部分にエアコンを取り付けました。

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10-照明工事/カーテン工事
09-カーテンレール取付工事/エアコン工事
08-塗装工事
07-電線管
06-大工工事2
05-大工工事
04- 新設配管工事
03- 解体工事2
02- 現場見学
01- 解体工事1

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「続・山王R~NEW STANDARD RENOVATION~」:山王マンションリノベーションⅢ
場所:福岡県福岡市
山王マンション:築45年、RC6階建
元間取:3DK-48平米
所有:吉原住宅㈱
運営:㈱スペースR デザイン
施工:シーズ・クリエイションズ㈱(Shii’s Creations)
設計:信濃設計研究所/nano Architects

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