■ “時代蘇生” 山王マンション-407号室
プロジェクトメンバー
施主:吉原住宅株式会社
設計:信濃設計研究所
施工:時空建築工房
+株式会社スペースRデザイン
写真:日高 康智(air studio)
概要
敷地住所:福岡県福岡市博多区博多駅南4-19-5
主要用途:1F・テナント / 2F〜6F賃貸マンション
主要構造:RC造6階建(1965年竣工)
延床面積:407号室 51平米
リノベ竣工:2007年12月
The Times Resuscitation Building :「時代蘇生」
山王マンション 407号室 リノベーション
■ 賞
2015:The Architizer A+ Awards 2015 / 特別賞 受賞作品
■ 「山王マンション」
山王マンションは、建設当時、最新鋭の設備を備えたモダンビルディングでした。外壁は、当時の時代表現ともいえる”色”を発した焼き物のタイル。バルコニーはなく、オフィスビルのような外観をしています。 |
■ 「時代蘇生」
昭和42年(1967年)、建設当時から時間が止まったまま、完全に時代から取り残されていた407号室。 この部屋をリノベーションの力により、現代に蘇らせたいと考えました。 ただし、スケルトンからのリノベーションは時間の分断であり、結果は新築とあまり変わりません。 新築ではつくることはできない、40年という長い年月のみがつくり出すことのできる雰囲気というものがあるからです。 時代蘇生とはこの時間醸成空間とも言うべき、部屋を形づくる本質的な雰囲気を尊重し、現代に蘇らせることです。
■ PLAN・・・なにを残して、なにを加えればよいのでしょうか?
元の部屋は、和室が3室ありました。和室1と3はフローリングにし、和室2は縁無し畳にしています。
天井部分は、既存天井材を撤去し、コンクリートスラブを表しにして塗装仕上げとしています。
40年数年前の障子は、既に木は痩せ建つけも悪くなっていましたが、まだ使用できると判断し、白く塗装して再利用しています。再生した結果、まだ充分に利用できることがわかりました。
障子の下にある地袋(収納)は、和室1では縁台をかぶせ、和室2ではフスマを撤去し、上部と合わせ障子を建て込みました。地袋の上に腰かけるという、当時の日本的な生活様式を踏襲し、更に発展させ円弧状の”縁台”を作り、そこに、”流木”を添えたのです。
■ 3Kから1LDKへ
■ なぜ「流木」なのか・・・「価値」について考えたから、そして、「素材」として魅力があったからです
私は窓際に流木を植えました。 「流木」の存在感は想像以上のものでした。 |
つまり、”生の自然”とも言うべき”自然素材”である「流木」を拾って部屋へ植えた瞬間、その存在はゴミからオブジェへと変身し、 部屋の雰囲気を一変させました。
「価値の転換」が行われたわけです。
そして、築40年を超える「山王マンション」は、古いからこそできるデザインのリノベーションを注意深く行うことにより、 古いからこそ価値がある建物へと変身しました。
「価値の転換」が行われたわけです。
流木はその象徴として私の部屋に佇んでいます。
■ 「リノベーション」とは、なんでしょうか?
私は2004年に山王マンションのリノベーションに参加させていただきました。
時代に取り残された築40年の賃貸マンションンを、現代に復活できないかと考え、新築にも負けない空間を造りあげようとデザインしてから、 今年で3年経ちました。その間、『リノベーションとは何か?』を、ことあるごとに考えてきました。
その中で”「リノベーション」とは「価値」を考え直すこと”・・・ではないか・・・と思うようになりました。
築40年を過ぎた建物。築年数が経てば経つほど、素材は汚れ、傷は増え、劣化もしていきます。それと共に価値が下がるという認識が一般的でした。
日本の社会では、「築年数が多くなるにしたがい建物の価値は下がる。」どうもそういった価値基準が定着しているようです。
そういった考え方に対し、長い年月のみがつくることのできる雰囲気が確かにあります。古い建物が独持の雰囲気を持っているのはそのためです。
つまり、「リノベーション」とは、その前時代の空間=”時間醸成空間”を活かして現代に蘇らせることではないかと考えに至りました。 それが『時代蘇生』の意味です。
2007年、リノベーション賃貸マンションとして再び時代の最先端に復活した築40年の山王マンションを見ると考え深いものがあります。 その独持の雰囲気は、実は新築の建物では決して造ることができない大変高い価値のあるものです。
古い建物は、そもそも古いなりの価値を持っており、それに気がついていないだけなのです。
古い建物が持っている価値を抽出し、輝かせることで、古い建物は充分に利用することができます。
その作業が「リノベーション」ではないでしょうか?
The Times Resuscitation Building
■Overview of Sanno Manshion
"Sanno Manshion", completed in 1967, the modern building wears the shiny black tiles was appeared in Hakata-ward, Fukuoka, the built-up area of low-rise wooden houses.
It was the cutting-edge rental apartment with the telephone switchboard room and the elevator which was rare at that time.
The time had passed, Sanno apartment dilapidated beyond 40 years and it fell into a negative spiral of decreased occupancy rate, reduction of rent and declined revenue. Everyone had been feeling that it had no value with the aged modern style appearance and the dingy shoji, fusuma and tatami-mat flooring interior.
But, does the decrepit building and interior truly has no value?
(* In Japan, it is common belief that the value of the building falls with the time)
■Design Concept
What is the "personality of space"?
I may say that it is the intention of the creator, something like ”will” which is similar to the life force inhabited in the space where reflects the expression of the era. The room 407 in Sanno apartment had the personality as such.
What is the "sense of the era"?
It is “trend” created by fickle public culture which come and go over the time. One of the reason we feel newness and oldness is because of that.
“Sense of the era = trend” itself has the power of creating value and it can move people's hearts to the different dimention from dilapidation. I might be able to say that renovation is the creation of “ sense of the era-value” in another dimention from dilapidation.
The concept of this room where the “Personality” is surely present but “ sense of the era-value” has lost over time, is “resuscitation of the era”, which means to resuscitate the life of the room by implanting the valuable “sense of the era” in the “present” while inheriting the personarity.
It is like a cyborg surgery that resuscitate a life that drifting the brink of death by replacing the dysfunctional area to the special function device….
■"This driftwood is a symbol of the dilapidated building in Japan"
Aged more than 40 years, “Sanno- manshion” has almost no value as it falls in inverse proportion to the time passes in Japanese common sense.
Here is a driftwood.
Would you see any value?
However, when we installed it, the room was dramatically transfigured to the space dominated by the presence characteristic of “wild design” of this driftwood .
As the driftwood which has no value transformed into the valuable object, “Sanno-manshion” could also revive through the renovation.
*photo:Yasunori Hidaka
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